特別養護老人ホーム「親の家」

「(真白でなく) お年寄り自身が美しく見えるような色合いにすることで、プライドを保って生活できるように 」という設計事務所(象設計集団)の思想のもと、具象をモチーフとした様々な意識の取り付く手がかりを散りばめた。浴室のタイル絵、室名板、表札、サインなどによって展開される環境芸術。

浴室タイル絵は「水空間の自然」をサブテーマにしている
p6100231.jpg 浴室タイル絵は「水空間の自然」をサブテーマにしている p6100233.jpg p6100322.jpg p6100316.jpg p6100292.jpg 木々を映す水面を泳ぐ亀たち p6100305.jpg 水の中から見た満月と月 p6100262.jpg 池の中から見たハスと蛙

武蔵野の雑木林を彷徨うと様々なもの、植物を発見するように、一つ一つ違う色々な木の葉を目印に。
ー国木田独歩「武蔵野」のごとくー

 

「武蔵野に散歩する人は、道に迷うことを苦にしてはならない。どの路でも足の向くほうへ行けばかならずそこにそこに見るべく、聞くべく、感ずべき獲物がある。武蔵野の美はただその縦横に通ずる数千条の路を当てもなく歩くことによって始めて獲えられる。

 

 

春、夏、秋、冬、朝、昼、夕、夜、月にも、雪にも、風にも、霧にも、霜にも、雨にも、時雨にも、ただこの路をぶらぶら歩いて思いつきしだいに右し左しすれば随所に吾らを満足さするものがある。」

 
 
 

しばらくすると水上がまばゆく輝やいてきて、両側の林、堤上の桜、あたかも雨後の春草のように鮮やかに緑の光を放ってくる。」

 


 

「光線の具合で流れの趣が絶えず変化している。水上が突然薄暗くなるかと見ると、雲の影が流れとともに、瞬く間に走ってきて自分たちの上まで来て、ふと止まって、きゅうに横にそれてしまうことがある。


 

 

「水上を遠く眺めると、一直線に流れてくる水道の末は銀粉を撒いたような一種の陰影のうちに消え、間近くなるに連れてぎらぎら輝いて矢のごとく走ってくる。」

楢の類だから黄葉する。黄葉するから落葉する。時雨が私語く。凩が叫ぶ。一陣の風小高い丘を襲えば、幾千万の木の葉高く大空に舞うて、小鳥の群かのごとく遠く飛び去る。


 
 

なかば黄いろくなかば緑な林の中に歩いていると、澄みわたった大空が梢々の隙間からのぞかれて日の光は風に動く葉末葉末に砕け、その美しさいいつくされず。

引用:国木田独歩「武蔵野」より